Arrow で超簡単レコーディング!第1回 Arrow 導入のメリット 〜すぐに使えるプリセットを検証してみた〜

Universal Audio のオーディオインターフェイス Arrow の使い方や特性についてご紹介します。ナビゲーターはギタリスト / 作編曲家 / 音楽プロデューサーの小川 悦司さんです。

Universal Audio の新しいオーディオインターフェイス Arrow 。Unison対応のマイクプリアンプを搭載する Thunderbolt 3 接続による次世代のオーディオインターフェイスとして注目されていますが、この連載では実際にどのくらいのポテンシャルがあるのか?音はどうなのか、本当に使いやすいのか?その辺りを私、小川悦司が検証していきます。 実際のサウンドサンプルも聴けますので、本文と合わせてぜひお楽しみください。

超シンプルなセッティングでどこでもレコーディング可能!!

セッティングは Arrow とパソコンを Thunderbolt 3 を接続するだけ。UADソフトウェア がインストールされていれば準備はこれだけで完了!!と実にシンプル。電源はバスパワーで供給されるので、ノートパソコンと Arrow、Thunderbolt 3 ケーブルだけあれば、どこでもレコーディングができるのです。

特にギタリスト、ベーシストにおすすめ!!

Arrow はオーディオインターフェイスですから、もちろん単にDAWのアウトプットに使っても良いのですが、やはりそのターゲットはギタリスト、ベーシスト、ボーカリストなど生演奏を録音したい人でしょう。Arrow にはUADパワードプラグインが標準搭載されておりギターアンプもベースアンプも用意されているので、ハードウェアのアンプやエフェクターがなくても、これだけで本格的なギターサウンドやベースサウンドが再現可能です。そしてマイクプリアンプも用意されていますから、もちろんボーカル録りにも完全対応します。

UADパワードプラグインはコンピューターのCPUへの負荷をそれほど気にせずにエフェクト処理を行うことが可能で、特に Unison テクノロジー搭載によってアナログ実機さながらのレスポンスが得られます(Unison は、Console の専用プリアンプ・インサートスロットに UAD プリアンプ・プラグインをロードして使用します)。

またこれらプリアンプやエフェクトはほぼゼロレイテンシーでの使用が可能という点も大きなメリットです。ギタリストの感覚で言うなら、「ギター」→「エフェクター」→「アンプ」→「マイク収録」という状況を Arrow 内だけで完結できるということ。あとは好きなDAWを組み合わせれば即レコーディングが可能なのです。

Arrowに搭載されているUADプラグインは以下の14種類になります。

● UA 610-B Tube Preamp and EQ
● Marshall Plexi Classic Guitar Amp
● Precision Delay Modulation
● Precision Delay Modulation L
● Precision Reflection Engine
● Precision Channel Strip
● Pultec EQP-1A EQ Legacy
● Pultec Pro EQ Legacy
● Raw Distortion Guitar Pedal
● Realverb Pro
● Softube Bass Amp Room 8x10
● Teletronix LA-2A Compressor Legacy
● UA 1176LN Compressor Legacy
● UA 1176SE Compressor Legacy

各プラグインの使い方のコツは次回以降に解説しますが、標準搭載のプラグインの特徴はこちらで確認できます。

実際に使ってみる!!

1. 接続

Arrow はエレキギターなどのHi-Z(ハイ・インピーダンス)の入力に対応しています。ですからエレキギターを Arrow の前面のインプットに接続するだけ!!Arrow のインプットはHi-Zモードに自動的に切り替わります。

2. パソコン上のConsoleを開く

ANALOG1のチャンネルの上部がHi-Zの表示になり、Arrow 本体右側のボリュームを動かすとConsole上の入力レベルが追従して変化します。ここから本体ボリュームでインプットレベルを設定します。

3.プリセットを選んでみる

チャンネルの INSERTS をクリックすると Channel Presets (複数のプラグインの組み合わせ)が選択できます。今回はここで Marshall Plexi Classic のフォルダの中のプリセットを使ってみます。まずは一番上の "BIG DISTORTED PLATE" を選んでみました。

4.プリセットの詳細を確認

プリアンプインサートスロットには Plexi Classic が、チャンネルインサートには Precision Reflection EngineRealVerb Pro の2種類が読み込まれているのがわかります。

TIPS:各プラグインについて

Marshall Plexi Classic Guitar Amp

Plexi (プレキシ) とは Marshall のギターアンプの一種で、狭義には1965年から67年くらいまでの 1959 Surper Lead 100 を指しますが、広義には1960年代中頃から1970年代初頭の 1959 と 1983 モデルまでをそう呼んでいます。この Plexi Classic には左側に JMP というロゴが見えているので1967年後半以降のモデルを再現したものでしょう。このアンプの詳しい使い方は次回以降に説明しますが、いわゆる60-70年代から現在に至るまでロックの代表的なギターサウンドを得ることができます。

Precision Reflection Engine   

小さめの音響空間を演出するアンビエンス・プロセッサーですが、アンプまでの距離感などを演出したり、プレートやスプリング系のリバーブの質感を演出することもできるので、ギターアンプに組み合わせて使うと効果的なエフェクトです。

もっとも、スプリングリバーブはフェンダー系のアンプにはマッチしますが、本物のプレキシには搭載されていませんし使うことも非常に稀です。ここではアンビエント系のセッティングで距離感の演出に使われています。

RealVerb Pro

汎用性の高いリバーブエフェクトですが、選ばれているプリセットは "Distortion Plate"。これはいわゆるプレート系のものですので、70年代のスタジオ系のリバーブのシミュレートと考えていいでしょう。このセッティングではリバーブタイムは2.1秒でハッキリとしたリバーブ感が感じ取れます。

デモ曲について

デモ曲はこちらから聴くことができますので解説を読みながらお聴きください。


今回のデモ曲ではエフェクトプリセットをそのまま使ってパラメータの変更は一切しておりません。ギターは数本使っていますが基本的にはプリセットのクオリティがそのままわかる形で収録しました。是非参考にしていただければ幸いです。

0:00-0:49 ロック系

  • バッキング
    使用ギター:MUSICMAN VH Model
    チャンネルプリセット:PEDAL METAL (MARSHALL PLEXI CLASSIC フォルダ内)
  • リード系
    使用ギター:MUSICMAN VH Model
    チャンネルプリセット:COCKED WAH (MARSHALL PLEXI CLASSIC フォルダ内)

バッキングで使っているプリセットの "PEDAL METAL" は Raw という80年代初期のビンテージ Pro Co Rat をモデリングしたペダル系歪みのエフェクトです。これを Plexi Classic に入力して、さらにディレイ (Precision Delay Modulation) をかけたプリセットです。

リードに使ったプリセットの "COCKED WAH" はワウを途中で止めた状態のシミュレートと推測しますが、やはりRawからPlexi Classic、そして PULTEC EQP−1A LEGACY を経由してディレイ (Precision Delay Modulation) という流れです。 Raw 自体が中域に癖がありますが、PULTEC がいい形でアシストしてワウっぽい雰囲気を強調していると言えます。

0:49-1:34 ブルース系

使用ギター:Gibson ES-335
チャンネルプリセット:ROOMY CRUNCH (MARSHALL PLEXI CLASSIC フォルダ内)

ピッキングの強弱によって歪み方の変化するクランチサウンドのプリセットです。Plexi Classic に空間系の PRECISION REFLECTION ENGINE の組み合わせです。ここでは部屋の響きはかなり短めですので、ミックス時にほんの少しだけリバーブを足しました。 

1:34-1:50 ロカビリー系

使用ギター:TELECASTER
チャンネルプリセット:FAT SLAP (MARSHALL PLEXI CLASSIC フォルダ内)  

Plexi Classic に Precision Delay Modulation という組み合わせで、Plexi Classic はダークな音色の INPUT 2 のみを使ってはいますが、トーンセッティングとスピーカーシミュレーターのイコライザーで明るめのサウンドに設定されています。これに対してショートディレイでロカビリーっぽい残響を演出しているものです。


1:50-2:30  フュージョン系

  • バッキング
    使用ギター:Fender Stratocaster
    チャンネルプリセット:WAVEY AMBIENCE (MARSHALL PLEXI CLASSIC フォルダ内)  
  • リード系
    使用ギター:Gibson ES-335
    チャンネルプリセット:SQUASHED FLANGERS (MARSHALL PLEXI CLASSIC フォルダ内)  

バッキングに使ったプリセット "WAVEY AMBIENCE" は、Plexi Classic から Precision Delay Modulation でコーラス効果を付加して、さらに RealVerb Pro で残響を加えたものです。リードの "SQUASHED FLANGERS" は、Plexi Classic からスタジオの大定番リミッター UA 1176 の系譜の UA 1176SE LEGACY、そして Precision Delay Modulation でうねりを加えたものです。

さて、いかがだったでしょうか?次回は Arrow で作る歪み系ギターサウンドを掘り下げてみたいと思います。お楽しみに!!

Arrow システム必要条件
必要なPC環境等、詳しい条件等に付きましては こちら をご参照ください。

連載予定

第1回 Arrow 導入のメリット 〜すぐに使えるプリセットを検証してみた〜 

第2回 歪み系ギターサウンドを手軽に録る!!

第3回 クリーン系ギターサウンドと空間系エフェクトを検証

第4回 ボーカルだって手軽に録れる!!

第5回 ベースを録る!!

第6回 エレアコやアコギのマイク録りも簡単

小川悦司

ギタリスト / 作編曲家 / 音楽プロデューサー 

ギタリストとして竹本孝之、今井優子、牧野由依、 劇団四季、中川ひろたかなど、ロックからジャズ、ミュージカル、子供向けの音楽まで、幅広いジャンルのサポートやレコーディングに参加するほか、「ポケモン」「ビーダマン」「オハスタ」「生き物地球紀行」などのTV番組関連、また「アイシールド21」や「ウィザードリィ外伝」などゲーム音楽のレコーディングにも数多く参加。楽器フェア等各種催事では長年にわたってYAMAHAやHookUp、Internetなど国内外のメーカー、ベンダーのステージデモを担当。作編曲家、サウンドプロデューサーとしても五十嵐はるみ、折重由美子、米澤美玖、JAZZ LADY Projectなどのジャズ〜フュージョン系からソーシャルアイドルnotallなどまで幅広いジャンルのアーテイストを手掛ける。また、櫻井哲夫の全国ツアーオケやモーターショーの音源制作、USJのサウンドデザイン、菅沼孝三、川口千里、大高清美、梶原順らのDVDや出版物への楽曲提供、「アニソン・エクササイズ」の音楽監修も行っている。執筆家としての関連著書も非常に多く、その発行部数はトータル1000万部以上にのぼる。 

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