Hookup,inc.

ヒントと秘訣 - Pultec Passive EQ Collection

Pultec EQ は、トラッキングからミキシング、そしてマスタリングにおいて、長きに渡り不可欠な要素のひとつとなっています。現在、Universal Audio の Pultec Passive EQ Plug-In Collection は、3つのクラシックな Pultec EQ の誉れあるサウンドを提供しています。ここにその活用術を記します。

Pultec EQ はどの商業スタジオを訪ねても必ず1台はラックに用意されていることでしょう。1950年代の初めから80年代初頭まで生産された Pultec EQ は、50年以上に渡ってレコーディングからミックス、マスタリングに至るまで様々な場面で使用され、レコーディング史と共に歩み続けてきました。Universal Audio は、Pultec Passive EQ Plug-In Collection として、EQP-1A Program EQMEQ-5 Midrange EQ、そして HLF-3C Filter の3つのクラシックな Pultec ラインナップをプラグインとして再現しました - そのすべてが実用的であり、音楽的な可能性を提示します。

今回、Pultec Passive EQ Plug-In Collection の3つのEQを以下のトラックに使用しました:

まず、EQP-1A をステレオバス、キック、左側のディストーションギターに使用しました。ベースは MEQ-5 を通し、1176 Classic Limiter Plug-In Collection の 1176 Rev A で約-7dBのコンプレッションを掛けています。2度目のメインリフから入ってくるギターには Pultec HLF-3C でフィルターを掛けています。その他のUADプラグインとしては、EMT 140 Classic Plate Reverberator 、左側のメインギターの LA-3A Classic Audio Leveler 、キックとスネアのゲート用の SSL E Series Channel Strip 、そしてステレオバスに使った FATSO Jr./Sr. Tape Sim. & Compressor Ampex ATR-102 Mastering Tape Recorder が含まれます。

それでは、これらのクラシックな Plutec ユニットがどの様に使われ、どういう風にご自身のトラックに適用できるのかを掘り下げていきましょう。

Pultec EQP-1A

EQP-1A は3バンドのEQですが、なじみのない方にとってはあまり直感的なレイアウトでないかもしれません。以下に、Low Shelf、High Peak、High Shelfの3つのバンドに関連付けられたコントロールの内訳をまとめます。

Pultec EQP-1A Legacy

EQP-1A の特長は、選択した周波数を同時にブースト/カットできることです。どのようにそれが行われるのでしょうか? Boostコントロールは、Attenuationコントロールによってカットされたそれよりもわずかにゲインが高く、影響を与える周波数も微妙に異なります。つまり、選択した周波数帯域に対しこの2つのコントロールを組み合わせて使えば、その「相互作用」を調整できることとなります。最終的に得られる結果が音楽的かつ実用的であるがゆえ、このユニークな EQP-1A は広く用いられるようになったのです。

それでは、EQP-1A の使用例をいくつかご紹介しましょう。

ステレオバスで EQP-1A を使う

EQP-1A は、ミックスの音域を拡張するのに最適です。ここではトラックのトップエンドをオープンにしながら、ローエンドはBoost/Attenuateの調整で濁らずビッグになるように設定しています。

ステレオバスにおける Pultec EQP-1A の設定

まずは、EQP-1A を通していないフルミックスです:

次に、EQP-1A を通したミックスをご確認ください:

EQP-1A でキックドラムを整える

ここではより多くのボトム感を得るだけでなく、いくつかの「ポイント」を押さえるようにしています。Attenuationコントロールを使って適切に調整を行いました。

EQP-1A でキックに鮮明さとパンチを与える

元のキックドラムです:

Pultec EQP-1A を通した同じキックドラムのサウンドです:

ディストーションギターの処理

エレキギターに対する効果的な設定例です。ここでもBoostとAttenuateコントロールを組み合わせローエンドを整えています。

ディストーションギターのトラックで効果的だった設定

元のギタートラックです:

Pultec EQP-1A を通したギタートラックです:

Pultec MEQ-5

MEQ-5 Midrange EQ は、中域に2つのブーストバンドと1つのディップバンドを備えるイコライザーです。このEQは、トラックに存在感とパンチを与える際に非常に有用で、ミックスを曇らせる中域の問題解決にも役立ちます。

Pultec MEQ-5

ベースを前面に出す

明瞭さとスペースを感じさせながら、ミックスの中でベースの存在感を出す設定例です。今回は1kHzのブーストと300Hzのディップによってうまく調整が行えました。

ベースのトラックの設定例

元のベースのトラックです:

Pultec MEQ-5 を通したベースのトラックです:

より太く、きめ細かなスネアに

次の例は、スネアをビッグにしながら存在感を少し強めるような設定例です。

スネアのトラックの設定例

元のスネアのトラックです:

MEQ-5で、スネアのスナップ感を残しつつやや肉厚にしたサウンドです:

Pultec HLF-3C

最後にご紹介する HLF-3C は、12dB/Octの鋭いカーブで低域と高域をカットするフィルターです。楽器の調整に役立つだけでなく、高域のヒス、低域のランブルノイズの除去にも便利です。

クラシックな Pultec HLF-3C

シェプアップ!

DIでライン録りしたギターのフィルター処理例です。

ギタートラックでファンキーさとローファイ効果を狙う

HLF-3C を通していないギターです。良い音ですが、必要以上に鳴っています:

同じトラックに HLF-3C を通しました。やや小さくまとめ、ミックスになじみやすくしました:

いかがでしたでしょうか?これらの例が Pultec Passive EQ Collection をより有効活用できるようになるきっかけになれば幸いです。操作もしやすいので、インサートすればすぐにその音楽性を感じ取ることができるでしょう。うまくいきますように。楽しんでください!

- John Paterno

関連記事

ページトップへ